カエル達なら、普段から料理に接しているから解るだろうか?
まだ少しだけカエルは苦手だけど、カエル達ならきちんと話を聞いてくれそうな気もする。
よし、レストラン・イナバに行ってみよう。
そう決めると私は立ち上がった。
「チェシャ猫、私ちょっと出かけてくるね!」
「僕も行こうか?」
「えっと、ううん、留守番お願いできる?」
チェシャ猫はうんと言うかわりに少しだけ喉を鳴らした。かわいそうな気もするけれど、でもやっぱり、当日になって驚かせたい。
私はチェシャ猫に手を振って部屋から出た。
引っ越す前とは地形が違っているけれど、この国は私の環境に合わせて変化していくみたいで、レストラン・イナバも近くのホテルの中に移っている。
げこげこと大勢で歓迎してくれるカエル達に少しひきつった笑いを浮かべながらも、私は話を切り出した。
「デザートですかー」
「そうなの。みんなには内緒で作りたいんだけど……教えてくれる?」
「アリスの頼みなら、喜んで! 何を使いましょうか? チョコの種類は? トリュフはどうでしょう? ブラウニーは? シンプルな生チョコにいたしましょうか? 洋酒のいいものもありますよ!」
「え、えーっと……」
げこげこと飛び跳ねながら、カエル達は畳み掛けるように訊いて来る。以前の過労死寸前状態からかなり回復したらしく、みんな元気そうだ。うう、でも迫ってくるのは止めてほしい。
すると、厨房の奥から怒鳴り声がした。
「カエルども! いないのかい!? 出来上がっているんだ、運びな!」
「あああっ大変だー!」
びょんびょんと飛び跳ねながらカエル達が慌てて奥に向かった。どうやら料理女の声だったらしい。
結局仕事もあるからと、代表として残った二匹のカエルと厨房の片隅で話し合う。うんうん、二匹だけだったら大丈夫。
……明日作るもの。
沢山作れて、美味しくて、そんなに時間のかからないもの……何がいいかな。
あれはどうだこれはどうだと色々な案を出しながら、最終的に意見を纏める。
「じゃあ、それで行きましょう!」
「うん! ありがとう、色々相談に乗ってくれて」
「ゲコッ♪ アリスのお願いですからー!」
カエル達は嬉しそうに喉を膨らませる。す、少し怖いけど、喜んでくれているみたいだから、良かった。
「じゃあ明日また来るね」
「はい、お待ちしてます!」
材料と道具も揃えてくれるということで、私はカエル達に物凄く感謝しながらレストラン・イナバを後にした。帰る寸前に喜んだカエル達にたかられそうになったけれど……。
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