特報スクープ!
都市伝説!? 幽霊アパートは存在した!




昨年、謎の口裂け男の足取りを追いつつも、最後でその手かがリを失った我々取材班。
だが今年は確かな筋からの情報により、
幽霊アパートの存在が解った。
そこに住む男性が謎の霊現象を体験したのだという。
我々取材班は男性と、同じく霊現象を目撃したという男性の知人に取材を申し込んだ。
男性は答えられる範囲でならば、と快諾してくれた。男性の知人は当初我々のインタビューに渋っていたようだが、男性に説得され応じたようだ。
早速我々はそのアパートへ行き、取材を開始した。


男性――ここではH氏とする。彼のアパートは少し狭い独身用アパートでありまた年数も経っており、出るのだ、と言われれば確かにそんな雰囲気がある。だが我々を迎えたH氏はそんな雰囲気とは裏腹に非常に明るい好青年だった。
早速インタビューを開始する。まずは、霊現象が起きた夜の事について尋ねてみた。


H氏:その日はちょうど……ここに引っ越してきてから一週間くらいだったかなぁ。そんくらいでした。夜だったんですけど、少し部屋の片付けをしようかなって思って。……あはは、忙しくて、ついダンボールとかそのままにしちゃってて。母さんから電話で、お札様を貼れって言われなかったら多分俺、そのまま忘れてたんじゃないかなー。

お札様……H氏によると、そのお札により霊現象の一端から逃れる事が出来たのだという。

H氏:いやーもー、このお札様とお守りとAさんがいなかったら俺、今頃こうしてられませんでしたもん!

……おっと、H氏から出たA氏という名前。このA氏こそH氏の知人男性であり、同じく霊現象を体験した人物である。

H氏:Aさんはですねー、凄いんですよー! 強いしー、かっこいいしー、頼りになるし!

H氏はA氏に全幅の信頼を置いているようである。

A氏:……だからHは僕を美化しすぎる癖があるんだってば。よく解らないけど。僕から見たら、お前の方が物凄いと思うけどね。精神とか。
H氏:えっ凄いですか俺!? やー、そんな正面から誉められると照れちゃいますねー!
A氏:……まあ、誉めてはいるよ、一応。


A氏はそうコメントをしつつも肩を竦めた。
……お互いを尊敬しあえる、良い友情関係なのだということにしておこう。
我々はその夜にH氏を襲った霊現象について尋ねてみることにする。


H氏:やー、あれは怖かったですねー。俺、怖いのすっごくダメなんですよ。

細部を聞くのはNGとされているので、何があったかを軽く説明してもらうことにした。

H氏:えーと、……トイレが真っ赤になってました。あ、あと息苦しくなったりー、お風呂場も真っ赤になってたかなー。でも部屋から出るなってAさんに言われてたんで。あ、Aさんに成りすまされたりもしましたねー。いやーよく考え付きますよね。もし俺が誰かをその部屋から出さなくちゃならないってなったら、部屋の外から呼ぶことしか出来ませんもん。頭脳戦ですよねー、凄いなー。頭いいんですねー。
A氏:あれで頭脳戦……?
H氏:頭脳戦ですよー! Aさんが出るなって言ってくれなかったら、俺飛び出してましたもん!
A氏:お前が考えなさ過ぎるんだ!



……H氏の説明によると、巧妙な手口で部屋から誘い出されようとしていたらしい。どうやらその部屋に何か、霊現象の起きる理由や因縁というものがあるのだそうだ。実際、過去にここで原因不明の死亡事故が起こっていたらしい。
A氏によると、それはある決まった、一年に一度の日にしか起こらないのだという。更には住居者の性別なども関係しているのだそうだ。
言えるのはそこまでだ、とA氏からストップがかかり、我々の知り得た情報は以上の微々たるものとなった。
最後にこのアパートについて、住所など解るものは伏せてくれ、と我々はH氏に頼まれた。


A氏:ま、見物気取りの人間が押し寄せられちゃ困るしね。
H氏:ですよねー。それはそれで、なんか俺ってアイドル?みたいな気分が味わえるかもしれませんけど!
A氏:それはないね。


なんと、H氏は今後もこのアパートに居住し続けるようである。
それゆえ、この場所が公になると困るのだそうだ。


H氏:沢山の人が来たらあの子もびっくりするかもしれませんし。あのくらいの子はデリケートですからねー。
A氏:……人を祟り殺すような奴にデリケートって言葉を使うか?


H氏の言葉によると、幽霊はどうやら若い子であるらしいが……この取材を終える頃には、我々にもH氏の精神の強さというものが実感できていた。

取材前には我々も霊現象と遭遇できるかもしれない、という微かな期待はあったが、どうやらそれは無理な話だったらしい。
来年のその日、詳しい日付けまでは教えてもらえなかったが、この部屋でまた霊現象はあるのだろう。
その日をどうするか、我々は最後にH氏に尋ねてみた。



H氏:うーん……Aさんに一緒にいてもらうか、Nに一緒にいてもらうかですねー。あっNって俺の友達なんですけど、いい奴なんですよー! お札様も沢山あげたし、代わりに一緒にいてもらおうかなー
A氏:うん、僕は絶対に来ないからそうしてもらうといいよ。
H氏:ええーっ何でですかー? Aさんも一緒にみんなであの子の誕生日を祝いましょうよ! お札様また差し上げますから!
A氏:前貰ったのがあるから、いらない。
H氏:そーですか? あっじゃあ皆さんにあげます! どうぞー貰ってってください!



……H氏の厚意により、我々は大量のお札をいただいた。

かくして今年の取材も終え、我々はまたしても人知を超える存在との遭遇はないままに帰路についたのだった。
来年、また来年こそはと、そう固く心に誓う我々であった――…。










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